ニューヨークのメトロポリタン美術館の特別展に、岡山から甲冑や日本刀が出展されるという。「侍の芸術」展ということだから、戦国から江戸時代にかけての文化財から選ばれた全日本代表というわけだ。出展される「赤韋威鎧」(岡山県立博物館蔵)と「太刀 銘吉房」(林原美術館蔵)などは国宝だから、もともと由緒正しい選抜選手。岡山出身のプロの野球選手がスカウトされて、大リーガーになるということか。
岡山の文化財を外国の人にみてもらい、日本文化の理解を深めてもらうのはよいことだ。
が、日本人が日本の文化財を理解しているか、岡山人が岡山の文化財を…というと、外国人と変わりないではないかという意見もある。「赤韋威鎧(あかがわおどしよろい)」ってなに? 刀って、親戚の叔父さんの家の床の間にある刀と、どこが違うの? ということになる。
博物館や美術館で公開されるときには足を運んで、本物を見ておきたいものだ。また手前味噌になるか、小社発刊の『岡山の文化財』(臼井洋輔著)は岡山のいろんな文化財を解説して参考になるよ。
岡山の文化財を外国の人にみてもらい、日本文化の理解を深めてもらうのはよいことだ。
が、日本人が日本の文化財を理解しているか、岡山人が岡山の文化財を…というと、外国人と変わりないではないかという意見もある。「赤韋威鎧(あかがわおどしよろい)」ってなに? 刀って、親戚の叔父さんの家の床の間にある刀と、どこが違うの? ということになる。
博物館や美術館で公開されるときには足を運んで、本物を見ておきたいものだ。また手前味噌になるか、小社発刊の『岡山の文化財』(臼井洋輔著)は岡山のいろんな文化財を解説して参考になるよ。
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最近、岡山から千葉県の国立歴史民俗博物館で放射性炭素年代測定の研究者に会う機会があった人の話を聞いた。測定の精度は上がってきており、自信満々のようだったということだった。さてどうなるか。これからもまだまだ炭素年代の論争は続くのだろう。少し前に読んだ『日本の歴史 列島創世記』(小学館)でも、決着は少し先になりそうだと書いてあった。
この本の著者・松木氏は、岡山大学の先生。1年ほど前に倉敷市真備町で発掘中の勝負砂古墳の現地説明会で見かけたことがある。昼は未盗掘の石室が見つかった前方後円墳を発掘しながら、夜はこの本を執筆したそうだ。
本の内容は、旧石器から古墳時代までの4万年の歴史を、日本列島全体を見渡しながら概説的に紹介したもの。日本の歴史シリーズの第1巻。若い研究者らしく、当時の人の心をとらえようとする方法論(認知考古学)で歴史を見直そうという姿勢が新鮮。堅苦しい考古学のイメージとは少し違い、さわやかな読み心地がした。石器や土器に道具に実用を超えた美意識を「凝り」と呼んでキーワードにし、全編を貫いている。サントリー学芸賞受賞作品。
地域の歴史だけを見ていると偏狭になってしまうが、何万年という長い時間と地域を超えて俯瞰する視点も必要ということを教えてくれる。
この本の著者・松木氏は、岡山大学の先生。1年ほど前に倉敷市真備町で発掘中の勝負砂古墳の現地説明会で見かけたことがある。昼は未盗掘の石室が見つかった前方後円墳を発掘しながら、夜はこの本を執筆したそうだ。
本の内容は、旧石器から古墳時代までの4万年の歴史を、日本列島全体を見渡しながら概説的に紹介したもの。日本の歴史シリーズの第1巻。若い研究者らしく、当時の人の心をとらえようとする方法論(認知考古学)で歴史を見直そうという姿勢が新鮮。堅苦しい考古学のイメージとは少し違い、さわやかな読み心地がした。石器や土器に道具に実用を超えた美意識を「凝り」と呼んでキーワードにし、全編を貫いている。サントリー学芸賞受賞作品。
地域の歴史だけを見ていると偏狭になってしまうが、何万年という長い時間と地域を超えて俯瞰する視点も必要ということを教えてくれる。
3世紀前半(200〜250年)の日本で、最も大きな墓は倉敷市にある楯築遺跡とされている。卑弥呼の死は「魏志倭人伝」に250年頃(247年)のようだから活動したのは250年以前。楯築遺跡の被葬者が活躍した時期と重なるではないか。この「楯築遺跡は卑弥呼の墓」説は、小社が14年前に発刊した『楯築遺跡と卑弥呼の鬼道』(薬師寺真一著)で詳しく紹介している。
楯築遺跡は弥生墳丘墓とも呼ばれ、弥生時代の終わりの墓とされる。次の古墳時代に出現する○と△の形を付けたような前方後円墳の形はしていない。円墳の左右に羽が生えたような形で、前方後円墳が誕生する前の姿。これが古墳時代になると前方後円墳の形になってくる。面白いのは、奈良の箸墓古墳とそっくり2分の1のスケールで造られた古墳が吉備にはある。浦間茶臼山古墳がそれで、吉備で最も古い大型の前方後円墳といわれる(小社の『吉備の古墳 上』)。
畿内で最古の前方後円墳と同じ尺度の古墳が吉備に…。なぜ? おお〜、ミステリー! 同じ設計図があったのか? 大和と吉備の関係は? このあたりも吉備の古代ロマンの入り口の一つ。吉備の勢力が大和に入っていった「吉備東遷説」もぜひ知っておきたい(小社の『前方後円墳と吉備・大和』近藤義郎著)。
楯築遺跡は弥生墳丘墓とも呼ばれ、弥生時代の終わりの墓とされる。次の古墳時代に出現する○と△の形を付けたような前方後円墳の形はしていない。円墳の左右に羽が生えたような形で、前方後円墳が誕生する前の姿。これが古墳時代になると前方後円墳の形になってくる。面白いのは、奈良の箸墓古墳とそっくり2分の1のスケールで造られた古墳が吉備にはある。浦間茶臼山古墳がそれで、吉備で最も古い大型の前方後円墳といわれる(小社の『吉備の古墳 上』)。
畿内で最古の前方後円墳と同じ尺度の古墳が吉備に…。なぜ? おお〜、ミステリー! 同じ設計図があったのか? 大和と吉備の関係は? このあたりも吉備の古代ロマンの入り口の一つ。吉備の勢力が大和に入っていった「吉備東遷説」もぜひ知っておきたい(小社の『前方後円墳と吉備・大和』近藤義郎著)。
5月末の新聞で、奈良県にある箸墓古墳の被葬者が卑弥呼であるかのような報道があった。国立歴史民俗博物館が、箸墓古墳の周辺で出土した土器が240〜260年と発表したからだ。
土器に付着している穀物などの炭素で年代を測定できるようになり、国立歴史民俗博物館が熱心に研究をしていたことは知っていた。4年前に国立歴史民俗博物館の春成氏が山陽学園大の公開講座で講演し、この放射性炭素の年代測定法で年代を割り出す科学的な手法を考古学に用いている話をしていた(小社の『日本の文化 岡山の文化』に収録)。この測定法の研究者は自信満々の話しぶりだったのが印象的だ。しかしまだ誤差があり、研究中ということだった。
今回の報道では、この土器の年代の240〜260年は箸墓古墳の築造の時期を示し、この年代は「魏志倭人伝」の記述にある「卑弥呼」の死亡時期(250年頃)にあたり、箸墓古墳は卑弥呼の墓だという。さらに、これで邪馬台国の場所も「九州説」より「畿内説」が確実になったという。
ちょっと待て。「卑弥呼の墓は吉備にある楯築遺跡である」という説をお忘れではないか。200〜250年(3世紀前半)の日本で最も大きな墓は、倉敷市にある楯築遺跡。箸墓古墳はそれより少し遅れるということではなかったか。箸墓古墳の築造期を少し前にして、卑弥呼と結びつけて話題を投げかけようと見るのは、吉備びいきの見方だろうか。
土器に付着している穀物などの炭素で年代を測定できるようになり、国立歴史民俗博物館が熱心に研究をしていたことは知っていた。4年前に国立歴史民俗博物館の春成氏が山陽学園大の公開講座で講演し、この放射性炭素の年代測定法で年代を割り出す科学的な手法を考古学に用いている話をしていた(小社の『日本の文化 岡山の文化』に収録)。この測定法の研究者は自信満々の話しぶりだったのが印象的だ。しかしまだ誤差があり、研究中ということだった。
今回の報道では、この土器の年代の240〜260年は箸墓古墳の築造の時期を示し、この年代は「魏志倭人伝」の記述にある「卑弥呼」の死亡時期(250年頃)にあたり、箸墓古墳は卑弥呼の墓だという。さらに、これで邪馬台国の場所も「九州説」より「畿内説」が確実になったという。
ちょっと待て。「卑弥呼の墓は吉備にある楯築遺跡である」という説をお忘れではないか。200〜250年(3世紀前半)の日本で最も大きな墓は、倉敷市にある楯築遺跡。箸墓古墳はそれより少し遅れるということではなかったか。箸墓古墳の築造期を少し前にして、卑弥呼と結びつけて話題を投げかけようと見るのは、吉備びいきの見方だろうか。
福武教育賞を受賞した太田先生のことをもう少し。原史料にあたり先人や新事実の発掘をされる研究姿勢やその成果はさることながら、特筆すべきはその人柄。これまで山陽学園の公開講座を収録する仕事や、先生自身の著書を制作する仕事、先生が監修をする大型書籍の仕事などを手伝させてもらってきた。周囲への配慮は一級品で、雰囲気が柔らかさが魅力的。そばにいて心地がいい。学生さんへはもちろん、後輩の方々への面倒見の良さにも、いつも感心させられていた。人格者として尊敬できる方だ。
「教育賞」というだけあって、教育者としての人柄も評価しているのだろう。そういう意味でも、ふさわしい受賞者だと思う。
現在は、小社から次の資料集を発刊すべく膨大な原史料と格闘中。1000頁を優に超えそうだ。
「教育賞」というだけあって、教育者としての人柄も評価しているのだろう。そういう意味でも、ふさわしい受賞者だと思う。
現在は、小社から次の資料集を発刊すべく膨大な原史料と格闘中。1000頁を優に超えそうだ。
プロフィール
HN:
執筆:金澤健吾
性別:
男性
自己紹介:
吉備人出版 取締役。
方谷研究会。
おかやま自転車ネット。
twitter/kibitoman
岡山の古代・中世・戦国・近世など郷土史大好き。岡山本も大好き。自転車、ジョギング、自然好き。ジャズ、ロックなど音楽好き。子育て中。
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