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吉備人出版・金澤健吾の編集日和です。
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岡山県備前市の出身の里村欣三という作家がいた。この里村は旧日生町に生まれ、戦争の徴兵を忌避して満州に逃亡後、帰国してプロレタリア作家として文芸誌で活躍する。その後、マレーシアやボルネオに従軍し、「従軍作家」として作品を発表し名声を得るが、昭和20年にフィリピンで銃弾を受けて戦死する。里村については、「徴兵の忌避」やプロレタリア作家から従軍作家へ「転向」ということもあり、あまり知られることはなかった。

ところが10 年ほど前から、日生町でこの里村欣三を顕彰しようという気運が起こった。戦争の時代に巻き込まれて「転向」いう生き方をしたが、地元出身の優れた作家として知ってもらうためだ。2年前に顕彰碑を建て、昨年は文学の関係者や里村ゆかりの人を招いてシンポジウムなども開催してきた。そしてこのほど、生誕110年記念の『里村欣三の眼差し』という書籍を発刊した。この本では50人もの方が里村を顕彰し回想する文章を寄稿している。http://www.kibito.co.jp/

この里村欣三顕彰会の方がこんな話をされた。
「里村欣三といっても、備前市全体では盛り上がらないんですよ。備前市には柴田錬三郎、正宗白鳥、藤原審爾をはじめ有名な作家の出身地です。作詞家の岡千秋も日生町から出ています。文学で地域おこしができるのですがねえ。備前市は備前焼と閑谷学校のみです。それはそれでいいことなんですよ。世界遺産を目指すというのもいいですよ。でも、市全体がそれで一辺倒というのはどうなんですかねえ」

市町村合併後、合併された小さな旧町村の意見は通りにくくなっているのかもしれない。それに予算の規模も小さくなり、文化事業の予算は削られているのだろう。備前市には、市民から小説や随筆、詩、俳句、短歌などの作品募集をして、地元の方が審査して書籍(冊子)にして発表する、いわゆる「市民の文芸」事業をやっていない。文化連盟などのような団体はあるようだが、たぶん天下りの団体になって新しい活動的なことはしていないのだろう。

この「市民の文芸」事業は、備前市だけでなく隣の瀬戸内市でもやっていないようだ。この事業は、各分野の審査員も必要で、地元の文化的な層の厚さがないとできないのかもしれない。とはいえ、やろうと思えばできないはずはないのだが…。

倉敷市や岡山市、総社市などは毎年、小学生から大人までの作品を市民から募集し、発表している。岡山県でも「岡山の文学」としてやっている。それらの作品集が本屋さんにならんでいたら、応募者の励みになるだろう。子どもの頃から生涯にわたって、市民が活字や本に親しみ、文芸作品を創作することは人生を豊かにするはずである。また「坪田譲治文学賞」(岡山市)や「内田百閒文学賞」(岡山県郷土文化財団)など、地元出身の文学者の名を冠にしている文学賞も、全国の地方都市にある。


「文化度」を書店の数や図書館での貸出し数などで計ることがあるが、行政の文化への取り組み度を計るには「市民の文芸」事業をやっているかどうかも尺度の一つになるのではないか。それでいうと、岡山県内の行政文化度は「西高東低」と言える、のかもしれない。
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執筆:金澤健吾
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自己紹介:
吉備人出版 取締役。
方谷研究会。
おかやま自転車ネット。
twitter/kibitoman
岡山の古代・中世・戦国・近世など郷土史大好き。岡山本も大好き。自転車、ジョギング、自然好き。ジャズ、ロックなど音楽好き。子育て中。
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